Case Study

アジャイル開発の高品質化とセキュリティ強化を図り、 短期間でのサービスリリースを実現

BIPROGY 株式会社 PRAISE CARD プロジェクト

導入したサービス
キーワード
  • ID認証
  • モバイル
  • DX
  • DevOps

称賛カードでコミュニティを活性化するカード型称賛アプリケーション「PRAISE CARD」の開発に
アプリケーション開発運用総合ソリューション「AlesInfiny(アレスインフィニィ)」を適用
アジャイル開発の高品質化とセキュリティ強化を図り、短期間でのサービスリリースを実現

プロジェクトの狙い

サービス提供開始に向け、限られた期間と体制で、機能の開発とセキュリティ強化を図りたい

BIPROGYが2022年9月末にリリースしたカード型称賛アプリケーション「PRAISE CARD(プレイズカード)」は、スマートフォンのアプリケーションを介して従業員同士で称賛カードを贈り合う文化を醸成し、組織の活性化を目指すコミュニケーションツールだ。

日々の業務の中で、例えば同じチームのメンバーと称賛カードを贈り合うことを通じてコミュニティの活性化を促進する。PRAISE CARDの特徴について、PRAISE CARDプロジェクトでビジネス推進を担当する金木彩音は、次のように説明する。

「PRAISE CARD は、メールで称賛や感謝の文章を書いたり、直接会って言葉を伝えたりするよりも心理的負担が少なく、より気軽に称賛し合う環境を作ることができるコミュニケーションサービスです。スマートフォンのアプリケーションを介して称賛カードを受け取ったメンバーは、仲間からの称賛によって自分の行動に自信が持てるようになり、前向きな行動が増えていきます。そして今度は自分が称賛カードを贈る側になり、仲間に自信を与える存在に成長していきます。PRAISE CARD は、称賛が習慣化する、成長意欲が高まる、チームワークが向上する、という3つの価値を提供するコミュニケーションサービスだと言えます」(金木)。

PRAISE CARDの開発プロジェクトは2019年にスタートし、2020年の終わり頃に賛同する企業の協力も得て、サービスの提供に向けた実証実験を開始した。そして2022年4月に正式版サービスの開発に着手、リリースを同年9月に決定した。しかしPRAISE CARDプロジェクトには、正式リリースに向けて解決しなければならない、いくつかの課題があった。当時の状況について、PRAISE CARDプロジェクトでプロダクトマネージャーを担当する森弘樹は、次のように振り返る。

「実証実験を通じて最初の顧客企業も早々に決まり、PRAISE CARDを正式なサービスとして、できるかぎり早くリリースしたいという思いがありました。実証実験に参画いただいた企業の方から“早く正式版を使いたい”というご要望をいただいたのです。一方、実証実験では予算の関係もあって実装する機能に優先順位を付けて開発を行っており、その過程で省略したり、あるいは必要最小限に留めたりしていた機能が多々ありました。正式なサービスとしてリリースするためには、これらの機能も追加で実装し、さらにはセキュリティ強化を図る必要があります。そのためには、新しい技術も採用して開発を進めていくことが求められます。しかし非常に限られた人員とスキルの中、半年間という短期間で開発プロジェクトを完遂することはかなり困難でした。そこで社内の専門家に相談して紹介を受けたのが、アプリケーション開発運用統合ソリューションのAlesInfiny(アレスインフィニィ)でした」(森)。

PRAISE CARDのサービスの特徴
アプリケーションから称賛カードを贈り合うことを通じてコミュニティの活性化を促進。
相手を称賛するという「他者貢献」を通じて、「相手を勇気づけること」と「自分が幸せになること」をどちらも実現する。

導入背景

限られた期間・体制での開発を実現するため、
システム開発と運用をトータルで支援してくれるソリューションを検討

AlesInfinyは、アプリケーションの開発/運用に必要なシステム基盤や各種ツール群、支援サービスを包括的に提供するBIPROGYのアプリケーション開発運用統合ソリューションだ。具体的には、アプリケーションの開発支援サービスやシステム実行基盤としてのクラウドPaaSサービス、共通ID認証サービスなどを包含する。

「PRAISE CARDの正式リリースに向けては、PRAISE CARDに必要十分な機能を開発、実装することが最優先課題になりますが、スマートフォンのアプリケーションであるPRAISE CARDには、直感的で見易いユーザー画面や使いやすい操作性が求められます。言い換えれば、ユーザーエクスペリエンスの重要度が非常に高いのです。さらにクライアントサイドのアプリケーション開発となるため、デバイスの機種やプラットフォームが多様で、各デバイスの特徴や性能を活かした実装や、開発言語や開発ツールの違いなどを考慮する必要があり、これまで経験してきたサーバーサイドのアプリケーション開発とは異なるスキルやノウハウが求められました。その際に、AlesInfinyのモバイルアプリ開発支援サービス (AlesInfiny Mobile App) は、スマートフォンのアプリケーション開発時にユーザー企業が直面する数々の課題を解決することを支援し、さらに各アプリストアでの公開管理までを全面的にサポートしてくれるものでした」(森)。

また開発プロジェクトを迅速かつ効率的に進めていくためには、柔軟なシステム基盤とツール群が必要となるが、この部分についてもAlesInfinyは、クラウドネイティブなシステム基盤サービスであるAlesInfiny DevSecOpsをラインナップしている。

「今回は短期間でのサービスリリースを実現するために、アジャイル開発をDevOpsで進めるというやり方を採ったのですが、これを実のあるものにするためには、速いプロジェクトのスピードに対応できるシステム基盤とツール群が必要です。この部分についても、AlesInfinyは、セキュリティにも配慮したDevOpsを実現する基盤であるAlesInfiny DevSecOpsを装備していました」(森)。

AlesInfiny DevSecOpsは、モバイルアプリに留まらず、さまざまなデジタルサービスを迅速に立ち上げ、俊敏かつ継続的にサービス改善のPDCAサイクルを回していくことを支援するDevOps基盤だ。クラウドサービスで主流になりつつあるコンテナ技術とPaaSサービスの活用により柔軟で俊敏性を実現するシステム基盤、アプリケーションからシステム基盤 および開発から運用まで広範囲にライフサイクル全体のセキュリティを担保するセキュリティ診断ツール、バックログ/Gitコード管理/インシデント/チケットなどの開発運用管理機能を提供するDevSecOps支援ツール群、アプリケーションの性能監視などのサービスを提供する。

「DevOpsとはいえ、アプリケーションを開発していくというフェーズは、どうしても時間がかかるプロセスです。しかしシステム基盤については、クラウドサービスを利用することで、必要な設定を管理画面上で選択していくだけで完了することができるという大きなメリットがあります。私自身も、以前別のプロジェクトでクラウドサービスの設定を行った経験がありました。しかしながら、管理画面上で選択していく過程で、さまざまな要素を適切に決めていかなくてはならず、判断に迷うことが多くありました。不慣れな人が作業を行うと、余計な時間がかかってしまいます。それがAlesInfiny DevSecOpsでは、BIPROGYのベストプラクティスをもとにさまざまな要素の設計指針が定められており、設定作業もクラウドやセキュリティに精通したスペシャリストに任せることができます。AlesInfiny DevSecOpsを利用すれば、クラウドサービスの使いやすさとスペシャリストの知見の相乗効果で、アプリケーション側の機能改善にも柔軟かつ迅速に対応できるシステム基盤を獲得することができるということです」(森)。

さらに今回、PRAISE CARDプロジェクトでは、PRAISE CARDを利用する顧客企業の個々のエンドユーザーを認証するための共通ID認証サービスも開発する必要があった。

「この共通ID認証の機能についても、AlesInfinyはAduME(アズミ)というID認証サービスを提供していました。AduMEは、BIPROGY自身が提供するB2BやB2Cのサービス、BIPROGYのパートナー企業が提供する各種サービス、さらにはお客さま企業が提供するさまざまなサービスのユーザーIDを一元的に統合し、ワンストップで利用可能にするものです。2018年4月のAduMEサービス開始以来、多くの金融機関や会計サービスが接続しており、60万人の生活者が登録されていました。AlesInfinyは、共通ID認証でも非常に信頼性の高いサービスを提供していたのです」(森)。

こうした数々の特徴と活用メリットを評価して、PRAISE CARDプロジェクトではAlesInfinyの採用を決定、2022年4月から本番環境の開発に臨み、同年9月にカットオーバーを迎えた。

デジタルビジネスの実現に向け、日々変化し、多様化するITへの要求
最新技術の活用だけでなく、人に依存するスキル、プロセスなど多岐にわたり、複雑性が増加。
AlesInfinyは、このような顧客の課題を解決するソリューションとなっている。

導入効果

ユーザーエクスペリエンスなどの上流工程に注力できるプロジェクト体制を構築し、
短期間かつ低コストで高品質なサービス開発を実現

実際のプロジェクトは、森を含む2名が進捗管理などプロジェクト全体を統括する役割を担い、約10名のエンジニアが開発作業に従事するという体制で進めた。

「実は当初、この10名のエンジニアでシステム基盤を構築することを考えていました。しかし、スケジュールとコストの面でAlesInfinyと比較検討した結果、AlesInfinyを採用することで構築にかかるスケジュールの短縮と工数削減という両面でプロジェクトに利点があり、確実だという結論に至りました。システム基盤の構築においては、実際に作る部分以上に“システム基盤の設計自体をどうするか”という点が非常に重要となり、決めなければならないことも非常に多くあります。それがAlesInfinyを採用すれば、システム基盤の構築については私たちの要望をスペシャリストに伝えるだけでよく、私たち自身はユーザーが直接触れるアプリケーションの開発フェーズにより注力することが可能となります。特に今回は、要件定義をきっちりと決めてから開発に臨むという形ではなく、DevOpsで随時要件を決め、作っては改善するということを繰り返しながら開発を進めました。そのために、機能を削る、追加するといった重要な判断や、ユーザーエクスぺリエンスなどの、より上流の工程に注力できるような体制が必要でした。その意味でAlesInfinyは、アジャイル開発において、DevOpsでより高品質なアプリケーションを開発することに大きく貢献してくれたサービスだと考えています。また実際のプロジェクト支援という点では、タスクやインシデントを管理できるDevSecOpsツール群が非常に有用でした。例えばインシデント管理は、これまでExcelを使っていたのですが、管理のしづらさや優先度を付ける作業の難しさを感じていました。それをDevSecOpsツール群では、Web上で簡単に行うことができます。こうした利便性の高い支援ツールが揃っていることも、AlesInfinyの非常に大きな魅力の1つだと言えます」(森)。

次にアプリケーション開発の観点からは、AlesInfinyのモバイルアプリ開発支援サービスが非常に有用だったと森は強調する。

「アプリケーションの開発後、リリースするまでにどんな作業が必要なのか分からないことが多かったのですが、モバイルアプリ開発支援サービスを利用したことで、Technical Query(技術的な問い合わせ)対応をしてもらうことができました。例えば、アプリストア運営事業者に対してどのようなリリース申請をすればよいかといったこともクリアになりました。こうしたことを自分で調べて、考えて行うとなると、多大な手間と時間が必要になります。それを専門メンバーにすぐに相談し解決できたことは、非常に大きな効果がありました」(森)。

さらにセキュリティ強化の観点からは、AlesInfinyのセキュリティ診断の機能を利用して、プログラムのデプロイ前にソースに脆弱性が無いかどうかをチェックするなどの対策を手間なく施すことができた。

「あとは共通ID認証サービスのAduMEですが、これは将来的な横展開までを視野に入れた導入です。BIPROGYでは、今後もさまざまなデジタルサービスをリリースしていく予定で、それらの認証にはAduMEが利用されると考えています。サービスを開発・提供する側としては、ユーザー認証の機能をそれぞれのサービスで個別に開発・用意するのではなく、すぐに利用でき、多数の実績のあるAduMEを利用することで、開発にかかるコストや、大切なユーザー情報を維持管理することに伴うリスクを軽減してサービスを提供することが可能となります。また、PRAISE CARDの顧客企業にとっては、今後新たなデジタルサービスを導入する際に、AduMEをユーザー認証に使ったものを採用いただくことで、PRAISECARDと同じ1つのIDで複数のデジタルサービスを利用でき、ユーザーの利便性とユーザー情報の一元管理が可能になります。こうした部分を汎用サービスとして利用できることは、非常に大きなメリットになると思います」(森)。

AlesInfinyのサービスラインナップ
上流のグランドデザインから、開発プロセス、アプリケーション開発支援、システム基盤、運用監視、共通サービス基盤まで、
ITシステムの開発/運用に必要となる多様なサービスを包括的に提供する。

今後の展望

今後も伴走してくれるパートナーと共に、PRAISE CARDのさらなる機能強化を図り、
ユーザーのコミュニケーションの活性化に寄与していく

今回PRAISE CARDプロジェクトでは、アプリケーション開発運用総合ソリューションのAlesInfinyを採用したが、AlesInfinyの1ユーザーとして開発プロジェクトを振り返った時、森は「さまざまな知見を持つスペシャリストのサポートを受けることができたことが、非常に心強く感じました」と強調する。

「例えばシステム基盤の構築をお願いした際、構築を担当する企業によっては、往々にして環境の引き渡しだけで何の説明もないことも少なくないのですが、今回プロジェクトを支援してくれたAlesInfinyの専門メンバーは、なぜこのような設定をしているのか、設計思想や根拠をきちんと説明してくれましたし、今後 PRAISE CARDプロジェクトで管理、運用していくことのできる情報もきちんと提供してくれました。こうした部分は非常に心強く、印象に残っています」(森)。

PRAISE CARDプロジェクトでは、今後もPRAISE CARDのさらなる機能強化を図っていきたい考えだが、この点について金木は次のように展望する。

「現在PRAISE CARDでは、やり取りされたカードのデータを分析して、メンバー同士の関係性を可視化するというサービスまで提供しています。今後はさらにその関係性を深掘りして、そこからさらにどんなことが分かるのか、あるいはさらなるコミュニケーション活性化のために、どんな取り組みが考えられるのかといったところまで踏み込んでいければと考えています」(金木)。

「導入するITソリューションの機能や使い勝手を見極めることはもちろん重要ですが、今回のプロジェクトを通じて、それと同じぐらいにユーザー企業に伴走してプロジェクトの遂行を支援してくれるパートナーの存在が必要不可欠だと改めて感じました。我々も今後 PRAISE CARDをご利用いただく顧客企業の皆さまに対しても、この視点を忘れないように心掛け、お客さまと成功を共に分かち合える存在になりたいと思います」(森)。

プロフィール

森 弘樹氏

PRAISE CARDプロダクトマネージャー
BIPROGY株式会社
プロダクトサービス第二本部 クリエイティブデザイン一部二室

金木 彩音氏

PRAISE CARDビジネス推進担当
BIPROGY株式会社
サービスイノベーション事業部ビジネス四部第一営業所第三グループ

PRAISE CARD (プレイズカード)

サービスサイト
https://praise-card.com/