Case Study

アジャイルとローコードを組み合わせて敏捷性のある内製開発を実現

北海道電力株式会社 様

キーワード
  • DX
  • UI/UX
  • アジャイル
  • ローコード

環境の変化に対応するため、
アジャイル開発とローコードを組み合わせた「北海道電力スピード開発」で内製化を始動
AlesInfinyを活用して現場が求めるデジタルを短期間でリリースし適応していく

プロジェクトの狙い

迅速かつ柔軟にIT・デジタルを提供するための環境やプロセスを提供したい

 北海道電力様は電力という重要インフラを支える企業であることから、システム部門である情報通信部様では安定運用を守るべしという文化が古くから存在しています。特にミッションクリティカルなシステムは専門の部隊が慎重に慎重を重ねてITを提供しており、そのような慎重さは今も大切に維持されています。

 一方で、低炭素社会の構築に向けた世界的な動きの加速、自然災害の大規模化・激甚化など、電気事業を取り巻く環境は大きく変化し続けています。予測困難な状態に立ち向かい、継続的な競争優位性を得るためには速さと柔軟性を兼ね備えた変革の選択肢が求められ、ITとの向き合い方にも変化が求められるようになっています。

 情報通信部様では今までの守りの文化を反映したIT・デジタルの開発プロセス・開発環境は大切にしながら、さらにビジネスの変化のスピードに追随するための選択肢が必要だという危機感から、今回のプロジェクトを通じてその手段となるあらたなプロセス・環境の整備を目指されました。

導入背景

アジャイルやローコードの副作用の理解からスタート

 本プロジェクトはIT・デジタルに関して変化のスピードへの追随を企業に根付かせることが目的であり、特定の技術・サービスを導入することは手段であっても目的ではありません。こうした背景から、はじめは変化への適応力のあるプロセスとしてアジャイル開発の導入を急ぐ意見もあったのですが、ウォーターフォールとアジャイルそれぞれの利点・副作用を共有認識とするところから始めました。深掘りを通じて北海道電力様の文化とのFIT&GAPを進め、目的である速度と柔軟性を兼ね備えられるTOBE像を具体化していきました。

「当社に新しい選択肢を啓蒙していくためには我々が社内を納得させられる必要があるため、この序盤のディスカッションは有益だったと考えています。」(佐藤様)

 開発技術についても、はじめからローコードありきの検討ではありませんでした。プロセスを策定しつつ開発プロジェクトの試行を進めていく中で、「迅速かつ柔軟にIT・デジタルを提供する」というミッションと、お客様の制約や現在地を照らし合わせたときに、ローコードが適切であるという着地点に行きつきました。

「ローコードは小回りが利きづらい部分も存在するということで当初は懸念もありましたが、目的として速さや柔軟性に重きを置いていることや、適応力を求めるプロセスとの相性という面で動くアプリの現物確認やDevOpsがやりやすいところに価値を感じました。 
 アジャイルについても、ローコードについても、きっちりとメリットだけでなく副作用について議論を深めていくことが出来た信頼関係から、今回の活動をBIPROGYさんと一緒に進めていくことにしました。」(蝦名様)

 このような経緯を経て、北海道電力様は速さと柔軟性を兼ね備えたあらたな選択肢として、プロセスにアジャイルを、開発技術にローコードを組み合わせた「北海道電力スピード開発」を定義し内製化に向けて始動されました。

導入効果

現場が求めるデジタルを短期間でリリースし適応していく「北海道電力スピード開発」のプロセスと基盤を構築。
メンバーの専門性を活かしたワンチームで内製を伴走。

「構築したプロセスと開発基盤を活用して、実際に当社チームでアプリ開発が進められるようになってきました。まだ伴走が必要な部分もありますが、ユーザーの要求を自分たちの力で柔軟に実現していくことについて、自信を得ることができました。」(佐藤様)

 AlesInfinyでは単独の商材を適用するのではなく、お客様の課題を解決するための複数の商材を連携させて提供することで、お客様のDXを積極的に支援します。今回のプロジェクトでは、ローコード・アジャイル・UI/UXの商材や専門家、および北海道電力様と長年の関係があるサイトSEが連携する形でお客様に伴走しました。利用する商材の組み合わせの面でも、例えばローコード製品画面にデザインをスムーズに取り込めるデザインツールテンプレートを用いて初期のUI設計をデザイナーが行うなど、連携ノウハウを活用する形でスピードを向上しています。

「様々な専門家の意見が活発に交換されることで、各場面での意思決定がより良いものになったと感じています。例えば、守りの文化として築いてきたプロセスや制約のなかでも、品質ゲートやセキュリティなど必要なものを上手く取り込む必要がありました。こういった場面では、アジャイルの専門家や、昔から付き合いがあり当社の文化を理解しているサイトSEの意見が頼りになりました。」(蝦名様)

 AlesInfiny LowCodeでは、ローコードだけでなく従来のプラグラミング開発で当社が培ってきた知見もあわせて提供することで、お客様がローコードのメリットを最大限活用できるように支援しています。

「開発基盤の提供という観点では、提供側と利用側の責任分解や、非機能面を考慮したアーキテクチャーの策定も考えなければなりませんでした。こうした点ではローコードの専門家からのプラクティス伝達が役立ちました。プラクティスからプロセスにフィードバックできたことで、プロセス自体もより良くなったと感じています。」(佐藤様)

 内製化において、標準化やシステム共通機能などの難易度の高い領域は、お客様が完全に体制を確立するのに時間がかかる部分があります。特にITアーキテクトが担当するこのような領域については、考え方の幹となる部分をお伝えしつつ段階的にお客様が自走していけるような形を目指しています。

AlesInfiny LowCode 伴走サービス
導入期、成長期、成熟期といったステップアップ形式で段階的な自走体制の確立を目指します。

今後の展望

「北海道電力スピード開発」をきっかけに、あらたな文化の普及を目指す。

 今回のプロジェクトではプロセスと基盤を構築し、ファーストシステムの内製までを実施しました。プロセスと基盤の発展・改善は今後も続けていく予定ですが、その他にも迅速かつ柔軟にデジタルの仕組みを開発して使っていくという文化の普及が必要だと情報通信部様は話します。

「今までの守りの文化は守りの文化で重要な側面がありますが、全員ではなくても役割分担として攻めの姿勢を担う文化も育んでいかなければならないと考えています。社会の変化、経営層からの期待の変化に確実に応えていくには、例えば機能性は60点でリリースしてしまい、その後にユーザー要求に沿って改善していくなど今までの文化と異なった考え方も必要です。
 まずは、そういった考え方に賛同してくれる仲間を集めており、2025年に予定している組織の再編成で形にしていくことも目指しています。このような我々自身の変化そのものも、IT・デジタルのアジリティを確保し環境の変化に対応していくために重要だと考えています。」(佐藤様)

プロフィール

佐藤 祐一郎様

北海道電力株式会社
情報通信部 情報通信企画グループ 

蝦名 優也様

北海道電力株式会社
情報通信部 情報基盤グループ 

東 佳輝氏

BIPROGY株式会社
デジタルエンジニアリング本部 アドバンスド技術部 適用推進室一課

AlesInfiny LowCode